【韓国カジノ(カンウォンランド)視察④】
引き続き、質問リクエストいただきました
「カンウォンランドの経済的立ち位置と横浜に外資事業者のカジノが出来た場合の比較、考察」についてお答えいたします。
②に記載しました「地元住民のカジノ規制(月一回)」は、実はギャンブル依存症対策ではなく、「経済政策」としてスタートしています。結果として、リピート数に相関する依存症対策にもなっている、とのご説明でした。
つまり、地域経済振興を目的とするのに、地元住民の経済力を吸い取ってしまっては本末転倒、というもっともな理屈です。
これは横浜も同様で、カジノ容認派は「大人の嗜みで遊ぶならいいじゃないか」と言うわけですが、その分、他の経済活動に回される余力が失われてしまいます。鶴ヶ峰でちょっと1杯、というお客さんのお小遣いがカジノに取られてしまう。二俣川のお客さんも、希望が丘のお客さんも。富裕層も高齢者も支出先が違えど同様で、いわゆるカニヴァリゼーション(収益の共食い現象)が発生します。
アメリカでは6~7割の影響力とも言われますね。
もう一つ、地域として経済的に発展したか
という観点。
カンウォンランドは廃坑された炭鉱の街なので、リゾートが出来ることで近隣に限っては地価が上昇しており、短期的なプラスの効果がありました。
しかし、自殺率や犯罪率が高く、ブランドイメージは低下したのか、結論としては人口15万人→3万8千人と激減しています。地域振興を目的とした以上、失敗例といわれてしまう所以です。
横浜のように、元々地価が高い一等地の場合はどうか、ですが「伸びしろ」という面では地方に比べて限定的と思われます。特に山下ふ頭はそもそもブランドイメージを全く損ねない「カジノに頼らない再開発計画」が示されていますので、もともとMICE(ホテルや劇場、国際展示場)としての経済価値向上が見込めています。
IRの場合、その集客力、カジノに流出するマネーは段違いに高いと思いますが、IRリゾートの場合、カジノに誘引するための「囲い込み装置」の機能になりますので、外への回遊効果に乏しく既存の元町・中華街・本牧などの商店、経済圏に与えるプラスの経済効果は極めて限定的ではないでしょうか。
実際のカンウォンランドの街並みは観光都市として発展することなく、負けた場合のサラ金・質屋、勝った場合でも風俗店という図式で、不健全な街になってしまいました。
それでも、意外にも表通りは一見普通の焼肉屋通りでしたので、楽観的に見れば横浜の治安も一見保たれ、他の商店街も特に変わらないように見えるのかもしれません。(実際には回遊効果を超えてカニヴァリゼーション分のマイナスがあり、時間の経過で既存店がなくなり消費者金融と風俗街に置き換わっていくと思います)
統計上も犯罪率や自殺率が悪化していき、市民の目に見えないように処置が徹底されているだけ、という構図が想像されます。
なお、カンウォンランド依存症対策センターの方は、家に帰ってから自殺を選ぶ人もいるため、マイナスの影響力は正確には測定できない(本当はもっと悪い)とのことでした。
仮に公営であっても、短期的にプラスの経済効果がでるだけで(通常の再開発でも建設業への特需や雇用促進、商業の経済効果は出ますので比較優位なのはカジノブーム的な短期の経済効果)、中長期ではマイナス面(風紀の乱れによる街の変容、イメージダウン、治安悪化による社会コスト)が大きくなり、結局「カジノのない再開発のほうが効果的」になる、という考察になります。
韓国のようにパチンコを全廃したり、違法賭博を抑える、暴力団の資金源根絶、など別の社会問題の解決因子になるならまだしも、
地域振興の経済政策としてマイナスの副作用をもたらす賭博に頼るのは間違いという結論が導かれます。
(「インバウンドへの効果」「海外へのマネー流出」はまた別に記載します。外国人専用で成り立つくらいインバウンド需要があれば、まだ救いがあるのですが・・・)